ヌテッラ

今日は恒例、ガンベロ・ロッソの食材ベスト10。
今回取り上げたのは、ジャンドゥイア・クリームです。
そう、イタリア人に溺愛されている、あのヌテッラも、このタイプのクリームです。

ヌテッラおしのローマのジェラテリーア。
 ↓
Nutella everywhere


もちろん日本のスーパーにも必ずあるし。

ヌテッラがどれだけ愛されているかが分る映画のワンシーン。
ナンニ・モレッティ監督の『Bianca/僕のビアンカ』(1983)のワンシーン、バケツで裸でヌテッラ。
いったい何を言い表しているのか・・・。
 ↓ 



というか、ヌテッラ以外にもこんなクリームあるんだけっけ?
というくらい、ヌテッラしか思い浮かばない。
ベスト1から10位まで、ヌテッラで決まりじゃないの、と思ったら、なんと、他にもいっぱいありました。
しかも、どれもみーんなヌテッラより美味しそう。
こんなにジャンドゥイアクリームがあったなんて、知らなかったなあ。

あ、そうだ、順位の発表の前にちょっとアドバイス。
スーパーや近所のお店で、上位に選ばれたものと同じ製品名のものを見つけて、値段は格安だからお得、と思ったあなた、それは大きな勘違いです。
ここでベスト10に選ばれているのは、いわゆる工場で作る大量生産品じゃありません。
職人が手作りする、アルティジャナーレの製品です。
だから、今回選ばれた製品は、そもそもヌテッラとは土俵が違う製品です。
値段が桁違いなのは当たり前。
特にイタリアのドルチェの世界では、こういう二重構造の勘違いがありがちなので、要注意です。
専門店で有名になって、大量生産品をスーパーで売って儲ける。
この仕組みを知らないと、ガンベロ・ロッソで美味しいって言ってたのに、全然美味しくないじゃん、てことになりかねません。
ガンベロ・ロッソのベスト10に選ばれるような製品は、多分、近所の店では簡単には手に入りません。

それでは、まず最初に、そもそもジャンドゥイア・クリームとは、どんなクリームでしょうか。
答えは、ヘーゼルナッツペースト入りのチョコレート。
その誕生には、『ガンベロ・ロッソ』によると、ナポレオンが関わっています(通説とはかなり違いますが)。
そこらへんの詳しい話は「総合解説」に載せましたが、イタリアにとってナポレオンは、征服の戦争を度々繰り返して国の中をめちゃくちゃにしていった人物ですが、その置き土産に、ヌテッラをイタリアにプレゼントしていったのだと思うと、ちょっと和みますねー。

なぜイタリアでヌテッラが生まれたのか、その理由も解決です。
そもそもの発端は、ナポレオンがトリノで行った経済封鎖。
イギリスの植民地からの物資が届かなくなって、カカオが足りなくなった。
その代用品とされたのが、ランゲのヘーゼルナッツでした。
これがジャンドゥイアです。
そしてこれをペーストにしたのがフェッレーロ家。
つまり、ヌテッラの製造元の会社。
現オーナーのミケーレ・フェッレーロ氏は、イタリアで一番の大金持ち。
フォーブスの世界の大富豪番付で23位。
イタリアで一番の資産家は、チョコレート職人の一族だなんて、イタリアらしいなあ。
そんな彼でしたが、2015年のバレンタインデーに亡くなりました。

葬儀の様子
 ↓



私はフェレロ・ロシェが大好きで、イタリアの免税店に行くと条件反射的に買ってしまいます。
ヌテッラはちもちろん常備しています。
フェッレーロ家の莫大な資産のご~く一部に、私も貢献していたんだなあ。
RIP。

Ferrero Rocher




あ、ジャンドィゥィアクリーム・ベスト10の話は、次回です。


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“ジャンドゥイア・クリーム”の記事の日本語訳は「総合解説」2012年10月号に載っています。

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America’s Oldest Mall Has Been Re-Imagined as an Urban Micro-Loft Community

The American shopping mall is an endangered species, a collection of relics of a fading form of commerce. Those that remain open struggle to remain relevant, and those that have passed on are either empty or demolished. This one in Providence, Rhode Island is different. It is America’s oldest indoor shopping mall, a three-story [...]

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Collection of Rooms — 71

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今日の一皿《ふきのとうのフリット》 Fritto di fukinoto



 そろそろ山菜の季節。山菜というと思わずため息が出るような開高健の比喩が忘れられません。
 
 「山の不屈の純潔が口いっぱいにほとばしる。そして峻烈の気迫をひそめたホロにがさがひろがっていく。あらゆる味のなかでもっともひめやかだがもっとも気品高いホロにがさがひろがっていく。舌が洗われる。ひきしめられる。小さいが鋭い弦楽器が凛と正面を直視して音楽を奏で、いきいきと二つ、三つ飛躍し、批評の言葉を考えるひまもあたえずにふいに消える。高貴なつつましやかさがその苦みにこめられているようである」(『新しい天体』)。

 というわけで今回は爽やかな苦味が初春を告げるふきのとうをフリットで。周囲の葉っぱを広げる。小麦粉をビールで溶いた衣をつけてオリーブオイルで上げる。丸いつぼみの方を下にして入れ途中でひっくり返す。シンプルにレモンを絞って塩でどうぞ。

Bon appetit !

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Plat du Jour vol.321

 

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【PICKUP】ケンドリック・ラマー『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』は傑作だった~Kendrick Lamar “To Pimp A Butterfly”

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ケンドリック・ラマーの新作『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』は大傑作!ということで、誤読や勘違いも多いとは思いますが、いろいろと書いてみました。




▼ホワイトハウスとアンクル・サム

このアルバムは人種問題を正面から扱った作品である。札束とアルコールの瓶を持ってホワイトハウス前に詰め寄せた黒人の群集を「白黒」で写したアートワーク。ファンクとジャズを基調としたサウンド。悪しき奴隷制度からトレイヴォン・マーティン事件に至るまで、差別が生み出してきた悲劇に対する度重なる言及。ラマーは、ときに武装して白人に対抗したブラック・パンサーに触れながら、ときに暗殺者の名前を持つジャマイカのラッパーを客演に招きながら、あるいはスパイク・リーの映画やストレートエッジを貫いたハードコア・バンドのフガジを引き合いに出しながら、アンクル・サムに敢然と対峙している。

▼ズールー・ラヴ

My hair is nappy, my dick is big, my nose is round and wide

ラマーは自身のアフリカン・アメリカンとしてのルーツに目を向ける。"Zulu Love"の副題がつけられた「Complexion」ではズールー・ネイションのメンバーであり"黒いジェダイ"の異名をもつラプソディーをゲストに迎え(同曲にはジョージ・ルーカスの名前もある)、ネルソン・マンデラに敬意を捧げた「Mortal Man」ではアフロビートを武器に権力に立ち向かったフェラ・クティ「I No Get Eye for Back」のヒューストン・パーソンによる カヴァーをサンプリングしている。「The Blacker the Berry」ではマーカス・ガーヴェイの名前も登場する。ガーヴェイはアフリカ回帰運動を唱えた1920年代の指導家だが、「i」における「Black Stars comes and get me」というラインはそのガーヴェイの船舶会社ブラック・スター・ラインのことを指すのではないか。作品を通して頻出する「back home」という文句の行き先は直接的にはラマーの地元コンプトンだとは思うが、ブラック・スターが行けなかった彼らの故郷でもあるような気がしてくる。

▼40エーカーとラバ1頭

奴隷制度への言及も非常に多い。「King Kunta」は『ルーツ』でドラマ化もされた奴隷クンタ・キンテをキングと呼ぶ曲。「Complexion」でも逃亡に失敗して足の指を切断されたキンテを描いたと思しき「You know I'd go the distance, you know I'm ten toes down」というラインが登場する。「For Free?」や「Alright」では「40 acres and a mule」という言葉が使われている。この「40エーカーとラバ1頭」とは、スパイク・リーの映画制作会社の名前にもなっている、解放奴隷に与えられたわずかばかりの補償のことだ。そのほか、奴隷制~三角貿易の象徴であるコットン畑、奴隷主が女性奴隷をレイプして生まれた青い目と明るい肌を持つハウス・スレイヴ、そして私刑を正当化して「リンチ」という言葉の元になったとされているウィリアム・リンチなど、奴隷制時代のトピックがあちらこちらに散りばめられている。そういえば、アートワークにおいて目にバツ印をつけられた白人が群衆に踏みつけられていた。手にジャッジ・ガベルを持っているあの男はヴァージニア州の治安判事だったウィリアム・リンチだろうか? それともトレイヴォン・マーティン事件で無罪をくだした判事/陪審員だろうか?(そして右側で腕を上げている少年の手元のモザイクは...?) 


▼ベリーよりも黒く、ジュースよりも甘い

「The Blacker The Berry」ではさらに一歩踏み込んで人種差別について触れている。「The Blacker The Berry」はアフリカン・アメリカンに対する古い言い回しのようだが、ラマーが参照しているのは2パック「Keep Ya Head Up」冒頭のヴァース、あるいはハーレム・ルネッサンス時代の黒人作家ウォレス・サーマンによる著作『The Blacker the Berry: A Novel of Negro Life』だと思われる。同書は黒人同士の皮膚の黒さによる差別を扱った一冊。色の黒い父親に似て生まれたヒロインのエマ・ルーは、肌の明るいほかの少女たちと比べて困難な人生を送るのだが、そんな彼女に好意を寄せた男性がかける言葉が「The blacker the berry, the sweeter the juice.」なのである。ベリーよりも黒く、ジュースよりも甘い。それは性的な意味も含んだ黒人女性に対する褒め言葉だが、このフレーズにはさらに続きがある。


"黒人"は一様ではない。性別、セクシュアリティ、経済力、年齢、宗教など、彼らはそれぞれが別の存在である。至極当たり前の話だが、それらの違いを暴力的に無化したのが奴隷制とその後の黒人差別であり、それによって作られた社会は黒人間での肌の色の優劣を生んだ。ラマー自身は「Complexion」で「Black as brown, hazelnut, cinnamon, black tea and it’s all beautiful to me」と"ブラック"の多様な美しさに触れているが、以前J・コールが「もしオバマがもっと黒い肌の色をしていたら、大統領にはなってなかった」と 発言して物議を醸したように、現在でも拭いきれない問題である。

▼俺のアソコはタダじゃない
 
また、「Complexion」ではフィールド・スレイヴとハウス・スレイヴについても言及されている。これもまた根深い問題だ。フィールド・スレイヴとはコットン畑で鞭を打たれながら働いていた奴隷、ハウス・スレイヴは家の中で仕えていた奴隷のこと。後者は主人の性的捌け口となった女性が多かったが、男性奴隷でも主人に気に入られれば畑での過酷な労働から解放されることがあった。「i」では『ジャンゴ 繋がれざる者』のサミュエル・L・ジャクソンの名前が出てくるが、あの映画でジャクソンが演じたのはまさにその役。主人におもねり、他の奴隷たちを見下すハウス・スレイヴである。

白人に媚を売り、白人社会に溶け込んでいくアンクル・トム。それは差別社会を生き抜く知恵であるとも言える。「This dick ain't free」と繰り返す「For Free?」のコメディアンのようなラップや「u」の後半で聴ける酔いどれ口調は、わざと黒人訛りの英語を話した黒人ミンストレル・ショーの役者よろしく、白人の持つ黒人のステレオタイプを演じているように聞こえる。それは戦略である。しかし、アフリカン・アメリカンのアーティストが自らのルーツとクロスオーバーな成功とを両立させるのは容易なことではない。一歩間違えれば白人社会に取り込まれ、セルアウトと批判されてしまう。

「The Blacker The Berry」でモチーフになっているハーレム・ルネッサンス自体がそうした問題を抱えたものであった。ハーレム・ルネッサンスは奴隷解放と大移動に伴う第一次黒人解放運動に支えられ、1920年代にニューヨークのハーレムで興った米国黒人初の文化運動のこと。同性愛文化としても重要な、カラフルなムーヴメントだったが、従来の南部的黒人ステレオタイプの払拭を望んだW.E.B.デュボイスなどの指導陣はエリート主義を標榜し(タレンテッド・テンス)、低所得者層や移民を中心に支持を受けていたガーヴェイと激しく対立していた。

また、運動のパトロンをしていたのはカール・ヴァン・ヴェクテンなどの白人たち(ニグロタリアン)が中心であり、キャバレーやクラブの経営も白人によるものがほとんどだった。ハーレム一のクラブ、コットン・クラブもそう。その名の通り、白人客に"古き良き奴隷制時代"を楽しんでもらうことを意図したこの店では、南部のプランテーションを模した内装のなか、半裸のジョセフィン・ベイカーがバナナ・ダンスを踊っていた。ハーレム・ルネッサンスは1929年の大恐慌の影響を受けて失速していったと言われているが、最大の原因は本当に恐慌だったのだろうか?
 
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▼ジョージ・クリントンとファンク

そんな作品の冒頭曲「Wesley's Theory」に、宇宙を舞台に黒人問題を描き続けたジョージ・クリントンが参加しているのは非常に示唆的である。しかもクリントンは「Hit Me!」というJBの常套句とともに登場。ベースを弾くサンダーキャットのプレイはブーツィー的とは言えないものの、ユニゾンを多用したコーラス・パートのようなPファンクらしいサウンドを伴うことで、そのユニークなフレージングの向こうにブーツィーの姿が浮かんでくる。また、「i」のミュージック・ヴィデオでは冒頭で「One Nation Under A Groove」というフレーズが語られているほか、「King Kunte」では「We want the funk」というフレーズが繰り返されている。これはAhmadの同名曲のサンプリングではあるが、クリントンに敬意を表したものに違いない。オバマの名前が出るところで急激にスクリューするスロー・ファンク「Hood Politics」でもPファンク風のコーラスが聞こえてくる。

さらに同曲ではJB「The Payback」が、「Momma」ではザップ「Computer Love」がサンプリングされていたりもするのだが、大きくフィーチャーされているゲストといえば、アイズレー・ブラザーズ。ロナルド・アイズレーが「How Much a Dollar Cost」で客演しているほか、ミュージック・ヴィデオにロナルドが出演している「i」ではアイズレー・ブラザーズの「That Lady」がサンプリングされている。燃えあがるようなアーニーのギターで始まるこの曲で、アルバムのテンションは最高潮に達する。
 
▼西海岸オールスターによるジャズ

もうひとつ、ファンクと並んで本作のサウンドの軸になっているのがジャズだ。担い手はテラス・マーティン、ファレル・ウィリアムス、サウンウェイヴ、フライング・ロータス、ロバート・グラスパー、サンダーキャット、カマシ・ワシントン、Sa-Raのタズ・アーノルド、ジェームス・フォントルロイ、ロナルド・ブルーナーJrといったLAビート/ジャズ・シーンの中心人物たちである。

アヴィシャイ・コーエンのバンドにも在籍していたサム・バーシュが弾くクールな鍵盤に合わせてスヌープ・ドッグがゆらりと顔を出す「Institutionalized」。グラスパー、マーティン、1500 or Nothin'のラーランス・ドプソンによる音色豊かなキーボードの競演にサンダーキャットがポストGファンク的な軽やかなブギー感を加える「These Walls」。アブストラクトな音響のなか、ワシントンやマーティンのサックスが入り乱れるフリー・ジャズ的な「u」。オーガニックなスピリチュアル・ジャズ・チューン「For Sale?」。ナレッジの縒れたビートにヴォコーダーとキーボードが穏やかに舞う「Momma」。アフリカをテーマにしながらピート・ロックのスクラッチが耳をひく「Complexion」。ロナルド・ブルーナーの重いドラムスがシリアスなリリックを引き立てる「The Blacker The Berry」。R&Bやフュージョン、ヒップホップやビート・ミュージックが卓越した演奏力で溶け込む洗練された現代ジャズは本作のメイン・サウンドだ。Sonnymoonのアナ・ワイズ、レイラ・ハサウェイ、ビラル、SZA、プレストン・ハリスらによるコーラスも全編とても美しい。

その一方で、「For Free?」のダイナミックなジャズ・アンサンブルや「Momma」後半のアフロ・ファンク、「Institutionalized」におけるオールド・ジャズ/ブルース的な音色のクラリネットや「u」の後半で展開される夜更けのキャバレーのような猥雑な演奏など、全体のテーマに合わせた仕掛けも満載。細かなリリックと大きなテーマ、そして強力な演奏陣と華やかな客演陣によるサウンドが隙なく有機的に交わり、重層的な世界を構築している。



▼キャタピラーとコンプトン

現代ジャズの精鋭と音楽を武器に闘ってきたファンク・レジェンドたちと作り上げた硬派なヒップホップ・アルバム。"To Pimp A Butterfly"をひとことで言えばそうなるが、ラマーはここにもうひとつ(といってもそれこそがメイン・テーマになるわけだが)視点を挟んでいる。その視点とはタイトルの“ピンプされるバタフライ”である。

タイトルが意味するところは、最後の「Mortal Man」で読まれる、親友がラマーの考えを描写してくれたという詩によってすべてが説明されている。つまり、バタフライとは世間が称賛する成功者のことであり、疎まれる対象である大多数のキャタピラー=芋虫が持つ「才能、思慮、美を代表する」存在のこと。芋虫たちは「cocoon」に「institutionalize」されて食べることと消費することのみを課された「a prisoner to the streets」であり、「these walls」に「trapped」されたことによりかつての思想を失った存在である(ちなみに、コクーンという単語はジョージ・クリントンのヴァースにも登場する)。

キャタピラーは黒人全体、コクーン(繭)は白人社会を指すものだが、ラマーが生まれ育ったコンプトンはその象徴的な場所であり、彼にとっての最も身近な現実である(「Hood Politics」では若くして亡くなった旧友の名前を出し、「i」のミュージック・ヴィデオでは家庭内暴力やドラッグに蝕まれた街の様子を描いている)。コンプトンはアメリカで最も犯罪率が高く、貧困層の多い地区のひとつだ。そのマッド・シティ=コンプトンに生まれた若者たちは、その環境で生き抜くためにさまざまな術を覚えていく。それはときに犯罪に手を染めることであり、ときに暴力で武装することであり、ときにバタフライをピンプすることでもある。もし俺が大統領だったら――「Institutionalized」でラマーは語っている。「母親の家賃を払って、仲間たちを解放し、シヴォレーのドアを防弾仕様にする」。そして執拗に繰り返す。「ズーム、ズーム、ズーム、ズーム、ズーム、ズーム」。彼らをよくみろ、と。

▼バタフライとニュー・スレイヴ

そのコクーンから脱皮して飛び立ったのがバタフライなわけだが、しかし彼らもまた決して自由であるとは限らない。彼らをピンプする存在がいるからである。ピンプとは売春婦を管理・斡旋する"ポン引き"のことを指すが(『ピンプ』を読もう)、それが転じて搾取するという意味、あるいは成功をおさめた人物のことを揶揄するスラングとしても使われている。つまり、このタイトルは、制度やシステムに搾取される成功者のことを意味している。金儲けのために音楽を作るエンターテインメント産業、税金を取り立てる国家、そして本来味方であるはずのキャタピラーたちでさえも、壁のなかにトラップされたことで思考が制限され、バタフライの美しさを自分の利益にしようとすることに加担している。

(脱税で国家からスナイプされたウェズリー・スナイプスはもちろん、マーカス・ガーヴェイへの言及も、もしかしたらこのテーマ全体に関連するものなのかもしれない。というのも、ガーヴェイのアフリカ回帰運動が頓挫したのは、身内である黒人解放運動の一部指導者からの批判と、でっち上げともいわれた郵便詐欺容疑での逮捕・投獄だった。) 

この場合、バタフライはキャタピラーとはまた異なった壁に囚われているとも言えるかもしれない。同じようなことは、カニエ・ウェストも"Yeezus"収録の「New Slave」で言っていた。かつては「店のものに触るな」という人種差別があったが、いまでは「黒人はみな同じものをほしがる」のだとベントレーやダイアモンドといった高価なものばかり買わせようとしてくる。これは"リッチ・ニガ・レイシズム"、ニュー・スレイヴだ、と。

カニエが「New Slave」と表現したリッチ・ニガ・レイシズムは、ラマーがいうところの"To Pimp A Butterfly"だ。
「Wesley's Theory」にはレーベルと契約した際にキャデラックやプラチナといった派手なものを買おうとしたというエピソードが述べられている。馬鹿なまねをしそうになった、あれはCIAからつながるストラップだったんだと続けて言っているが、ラマーのような信念の持ち主でさえもこの新しい奴隷を生み出す差別構造から逃れることは困難なことなのだ。奴隷制時代から現在まで、さまざまにかたちを変えて存在し続けてきた抑圧のシステムは、そこにいる本人がそうだとは気づかないくらいに周到に、複雑に現実に編みこまれている。

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▼ラマーの詩と2パックとの会話

では、そうならないためにはどうすればいいのか。ルーツを自覚し、アイデンティティを保ち続けることである。アフリカ、奴隷制時代、公民権運動、コンプトン。自分はどこから来て、誰に囲まれて育ち、何を目指しているのか。ラマーはこのアルバムで「I remember you was conflicted, misusing your influence」というフレーズを何度も何度も繰り返している。そのフレーズは曲が進むごとに少しずつ長くなっていき、「Mortal Man」に至って長い詩のようなかたちになる。そして、その詩の後には2パックのホログラムならぬインタヴュー音源との会話が収録されている。影響力を使い誤らないこと。貧しさに目を向けること。差別社会に立ち向かうこと。仲間同士での無駄な傷つけあいはやめること。誰に管理されるでもなく自分自身で何かをやりとげること。ラマーの詩と2パックとの会話の内容は、そのままこのアルバムの各曲のテーマになっている。

▼エブリ・ニガー・イズ・ア・スター

詩を読み、2パックとの会話を終えたラマーは、最後にもうひとつだけと言って、バタフライとキャタピラーの詩を朗読する。先に述べたようなことが書かれているのだが、その詩を締める一節はおそらくラマーが本作を通じて最も言いたかったことである。

Although the butterfly and caterpillar are completely different, 
they are one and the same.

クンタ・キンテ、ナット・ターナー、フェラ・クティ、ジョージ・クリントン、ジェイムス・ブラウン、アイズレー・ブラザーズ、ドクター・ドレー、スヌープ・ドッグ、マイケル・ジャクソン、スパイク・リー、デンゼル・ワシントン、マイケル・ジョーダン、ディケンベ・ムトンボ、リチャード・プライヤー、ウェズリー・スナイプス、2パック。そしてケンドリック・ラマー。このアルバムに登場する数々のバタフライたちもかつてはキャタピラーだった。そして、キャタピラーはみなバタフライになる可能性を持っているのだ、と。

しかし、最後の最後でようやく明らかにされるこの主張は、実は作品のなかで既にかなりわかりやすく提示されている。そう、このアルバムを再生してまず初めに聞こえてくる言葉――「エブリ・ニガー・イズ・ア・スター」だ。ぜひ一度アルバムをリピート機能で聴いてもらいたい。バタフライとキャタピラーはそもそも同じものなのだという詩をラマーが読み終えて、このポジティヴなフレーズが聞こえてくる瞬間。その美しさにきっと鳥肌が立つはずだ。




(追記)
ラマーのラップが全編最高にかっこいい!ということを書こうと思って忘れてしまった...... 

今日の一皿《バカリャウ・ア・ゴメス・デ・サ》 Bacalhau à Gomes de Sá



 パスティス・デ・バカリャウ(干しダラのコロッケ)ブランダード(干しダラのポテトグラタン)など干しダラ料理に目がないチキテオ。今回はポルトガルの直球勝負な一皿。皿の上の素材が渾然一体となった素朴な旨さがうれしい。このGomes de Sá というのは干しダラなどを扱っていたポルトの裕福な商人の息子の名前。いつのまにか家運が傾き、セニョール・ゴメスはレストランに職を見つけ、この料理を考案したのだそうです。なんだか生々流転を感じようなエピソードでありますな。
       
 ポルトガルの干しダラがあればベスト。なければvol.107の要領で干しダラを作る。なるべく身が厚い方が適している。干しダラを水で戻す。戻しすぎると味気ない単なる鱈になってしまうので注意。戻した干しダラを良く熱したスキレットで焼く。焼き色がつくぐらいが良い。茹でたじゃがいも、ゆで卵、タマネギのスライス、オリーブなどと一緒に皿に盛りつけて、塩・ブラックペパーで味を整え、上からニンニクオイルをかけ回し、イタリアンパセりやコリアンダーをかける。オーブンで焼くパターンもあります。

Bon appetit !

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Plat du Jour vol.320

 

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Ultra Music Festival 2015

Today starts the 17th annual Ultra Music Festival, as always in downtown Miami. The festival, gonna run Friday, March 27th through Sunday, March 29th, and you can watch it in live stream in the player above. Here’s the line up

Day 3 — lineup


 

Day 2 — lineup


 

Day 1 — lineup

The Olio Model One Smartwatch is what the Apple Watch Should have been

There’s something about this smartwatch revolution that feels a bit, I don’t know, forced? It’s the case of a product without a problem, a solution to something that isn’t broken. But brands have told themselves that smartwatches are going to be the next big thing, and they’ve all released their [...]

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Girls They Just Wanna Have Fun — 121

Girls.


































































































Why Instagram censored this image of an artist on her period

Rupi Kaur menstruation photography Instagram censorship

When Rupi Kaur decided to make the taboo around menstruation the theme of her university photography project, she probably didn't expect to become ground zero in Instagram's latest censorship war.

The Canadian poet and artist uploaded an image from the visual series to the photo-sharing platform. It depicts her fully clothed with a spot of blood between her legs and on the sheets. Instagram…

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